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『LPガス販売店のための法律Q&A』
改定第6版 発刊にあたり

1996 年(平成8 年)に「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律」(液化石油ガス法=液石法)の大幅な改正が行われ、翌年から施行されました。その前後から、LPガス販売業界において顧客移動、いわゆる顧客切替によるトラブルが顕在化します。

本書『LPガス販売店のための法律Q&A』は、大改正から10 年後の2006 年(平成18 年)に初版を発行しました。顧客切替トラブルが頻発化し、当事者間での話し合いがつかない、話し合いの場すら持たれないといった例も増え、弁護士への相談や裁判に持ち込まれることが増えてきた時期でした。LPガス販売事業者の広報や営業支援業務を行う当社にも、経営や営業現場から法律面での検討案件が増え、弁護士への相談も増えました。

そこで、これらの検討や相談例をもとに、LPガス業界の法律問題に精通した松山正一弁護士の助力を得て「LPガス販売店のための法律解説書」の発刊が企画されました。

編集内容は、LPガス販売事業者が保安関連法令以外の分野で基礎知識として知っておくべき法律知識をまとめることを目的に、顧客切替トラブルだけでなく、販売事業者の営業活動や経営において想定されるトラブルや現場のさまざま「質問(Q)」に、弁護士ら専門家がわかりやすく「回答(A)」する形式としました。

もちろん、個別トラブルでの法律的な解決をめざすには、最終的には弁護士ら専門家に相談し、場合によっては裁判所の判断を仰ぐことになります。本書は、その前段階の“ 紙上相談所” を目指したものです。

本書はLPガス業界の多くの方々に支持され増刷を重ねました。また、増刷にあたっては重版とせず、前刷以降の顧客切替トラブルでの裁判例や行政指導、会社法、個人情報保護法、特定商取引法や消費者契約法などなどの法令への対応などを踏まえて改定し、第5版となっています。

液石法大改正から四半世紀を経て、LPガス販売業界をめぐる状況は、新築着工件数の減少等により新規の需要家軒数が減少傾向となり、既存顧客の奪い合いが全国に広がろうとしています。また、電力・都市ガスの小売自由化により、価格やサービス、そして契約のあり方において他エネルギーと同列で比較されるようになってきました。

さらに、消費者保護政策の強化、労働環境改善の要請と人手不足などの内外要因で、販売事業者の営業活動や経営は、従来にも増して難しい舵取りが求められています。

液石法はその後、関係法令も含め何度かの改正が行われ、行政からも改正の趣旨を徹底させるための省令や通達、指導が出されています。また、業界団体による『LPガス販売指針』など自主ルールも制定されてきました。しかし、顧客獲得競争が激化していく中で、それは必ずしも順守されなかったり、業者間で理解や解釈に相違があり、顧客切替トラブルは全国で常態化しつつあります。

こうした状況を踏まえ、本書は今回6 度目の改定を行うことといたしました。今回の改定では、全体を「裁判所を使った手続き」「LPガス供給に関わる法律関係」「顧客とのトラブル」「LPガス事業者を取り巻くその他の諸問題」の構成に改め、トラブル時の対処と事前の予防措置、その法律的裏付けについて多くの部分を新たに書き起こしました。新たな執筆部分は、初版からの監修者である松山弁護士のほか、同様にLPガス業界に精通している野尻昌宏弁護士、小田昌慶弁護士によるものです。

さらに今回の改定では、1995 年(平成7 年)以降の顧客切替をめぐる裁判例の要点解説も掲載することとしました。裁判例の掲載は、同様案件で相反する判決が出ている現状を整理し、顧客切替の「あるべき姿」=ルール化を模索する上での情報提供が目的です。

ビジネスであれば事業者間に競争が存在することは当然のことです。しかしその競争は、競争に勝った事業者に利益を与えるだけでなく、消費者利益を継続的に実現するものでなければ、事業者やその業界の持続的な発展にはつながりません。

一般商取引も含めたLPガス販売に関連する法律は、消費者利益と事業者・業界の発展の同時実現を目的として制定されているはずです。法律がその目的通り運用され、順法精神がLPガス業界だけでなく社会全体の持続的な発展につながることを希求し、改定版発行の巻頭の辞とします。

2021 年(令和3 年)9月30日
株式会社 ノラ・コミュニケーションズ

著者・監修者

松山 正一(まつやま・しょういち)

松山・野尻法律事務所所長。第二東京弁護士会所属。早稲田大学法学部卒。損害保険会社や、東証一部上場エネルギー会社の顧問として、契約・債権回収等企業法務全般を中心に活動。著作「この一冊で『刑法』がわかる」(三笠書房)、監修「LPガス販売店のための法律Q&A」(初版~第5 版)ほか。

野尻 昌宏(のじり・まさひろ)

松山・野尻法律事務所パートナー弁護士。第一東京弁護士会所属。東京大学法学部卒。東京と地方(元・大分県弁護士会副会長、元・九州弁護士会連合会理事)の両方における弁護士生活を通じて多種多様な法律分野の具体的な事件処理だけではなく、弁護士会役員や国・自治体の委嘱委員としても関与。共著〉「隠された証拠が冤罪を晴らす」(現代人文社)。

小田 昌慶(おだ・まさよし)

松山法律事務所。第二東京弁護士会所属。慶應義塾大学法学部卒。LPガス事業者の法律案件のほか、各種契約・債権回収・労務問題等企業法務全般を中心に、一般民事、家事事件等幅広く活動。監修「LPガス販売店のための法律Q&A」(第5 版)。


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