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Interview
集合住宅の耐震と構造
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設計士は施主の代理人
大切なのは「設計」と現場の「監理」
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一級建築士
宮崎州 氏
(株)州建築構造設計
代表取締役

一級建築士
長谷正文 氏
(株)NAAC一級建築士事務所
代表

 05年の暮れから世間を騒がせた「耐震強度偽造問題」。集合住宅オーナーにとっても、自身が所有するアパート・マンションの構造設計や耐震強度がどうなっているか、どうすれば安心な建物を入居者に保証できるかは気になるところ。集合住宅の耐震と構造について、一級建築士からアドバイスをいただきました。

宮崎 州 氏
構造設計を専門分野とする建築士
(株)州建築構造設計
代表取締役 昭和27(1952)年1月1日生。芝浦工業大学建築工学科卒業。(株)SEC建築構造設計、(株)琢建築構造設計を経て、昭和63(1988)年に(株)州建築構造設計を開設。日本建築学会、日本建築構造技術者協会に所属。

長谷 正文 氏
一級建築士
専門分野はデザイン
関東学院大学非常勤講師 (株)NAAC一級建築士事務所 代表 昭和29(1954)年1月26日、愛知県生まれ。芝浦工業大学建築工学科卒業。芝蔵工業大学大学院工学研究科建設工学専攻修士課程終了。昭和63(1988)年からNAAC主宰。


検査機関の検査は
建物の耐震性を保証するものではない

――そもそも「構造計算」とはどういうものですか。

宮崎 簡単に言えば、建物が外力に耐えられるかを計算するものです。建物の壁の量や柱の数、それらの強度が地震等に耐えられるか、そういったことを計算します。
長谷 耐震基準は建築基準法に記されています。さらに新耐震設計法(*1)により耐震性を確保するための細かな基準も示されています。建築物を建てる際の「建築確認」では、この新耐震設計法に基づいた構造計算書を提出します。それを行政(自治体)や民間の検査機関が審査するわけです。ただし、2階建てや平屋建ての建造物を作る際には、住宅規模の建物は、構造計算書の提出は義務付けられていません。

――一連の事件報道について、構造計算の専門家としてはどうお考えですか?

宮崎 事件後報じられているように、計算方法により耐震強度の数値は変わります。従来とは異なった新しい計算方法の採用も認められているわけですが、ただこれは、もともとは特殊な建物について耐震性を確保するために考えられたもので、経済性が目的化するのはいかがなものかと私は思います。 どうしてもわからないのは、構造計算書を設計士がわざわざ偽造する必要があったのか、ということです。 長谷 正しい設計図であっても現場がその通りにやらない、という事例もありますから、逆に言えば、形に残る計算書で検査機関を誤魔化すことをなぜしたのか、ということですよね。

――検査が民間になったから甘くなった、という指摘もあるようですが?

宮崎 民間化それ自体が悪いということにはなりませんが、審査される企業が検査会社の株主だったということになると、誤解も生じやすいですね。
長谷 民間になることでスケジュールが読めるようになったというメリットもあります。自治体での検査は、人員の問題等で時間がかかりましたから。それに自治体の検査では、近隣の問題等も踏まえて結論を出しますから、どうしても遅くなるようです。けれども、建築基準以外の問題を踏まえて建設許可を出すということが、あながち悪いとも言えない。建てるときや建てた後のトラブルを望まない場合には、建築基準以外の要素も大切ですから。 (*1)1981年に導入された基準で、従来の耐震基準を強化したもの。5,500人の被害者を出した阪神淡路大震災で倒壊した建築物の多くは、この新耐震設計法以前に建てられたものでした。

建物の建築は「自己責任」
第三者への「監理」委託も有効

宮崎 事件報道で、一般に誤解があるようですが、検査機関は構造計算を審査するのであって、建物の耐震性を保証するものではないわけです。
長谷 耐震性の保証について言えば、設計や施工について「性能保証」というものがあります。それもただ、性能保証があれば大丈夫ということではありませんね。ハウスメーカーなどのパッケージの建物であれば上屋の性能保証はされています。けれども基礎は別。軟弱地盤にいいかげんな基礎で建てられれば、性能保証も意味はありません。耐震に限らず、良い建物というのは、設計と施工の両面で見ていかなければなりませんし、原則は建てる側の自己責任になっていきます。

――しかし、素人である施主が設計や施工をしっかり見るというのは困難だと思いますが。

長谷 もちろん自己責任といっても、素人ではわからないのは当然です。第三者のプロが見る、という方法もあります。

宮崎 「監理」を専門家にまかせるという方法です。設計どおり工事が行われているか、設計で気付かなかった現場の特殊状況、例えば地盤が弱かったといったことに対する対処がなされているか、そういったことをチェックするのが「監理」です。

長谷 地盤のことなどを考えると、設計の段階で設計士がその土地を見ていないと安心できませんね。自分の資産として建物を建てるなら、土地や土のこと、近隣の状況なども一緒に見て、判断する設計士を雇うべきでしょう。ただ、なかなかそれができずに設計・施工は建築業者にお任せというのであれば、多少コストはかかっても、監理を第三者に委託するべきです。設計士など建築士の資格を持つものであれば、監理の仕事もできます。大切なことは、施主の代理人となってくれる設計士、建築士を選ぶことです。

集合住宅での耐震補強はリニューアル時に
信頼できる業者に依頼しよう

――既築物件の耐震診断や補強は簡単ですか?

宮崎 建物が建った後でも耐震診断はできます。しかしコストがかかります。また、耐震のみの補強工事も、工事の費用のほかに入居者に退去を求めなければならないなど、大きなコストになります。

長谷 自治体によっては耐震診断や補強工事に補助をするところもありますから、相談してみると良いと思います。ただ、賃貸用の物件の場合、予算をギリギリに切り詰めて建てるということも多いようですから、後から中途半端な耐震補強をするのは、かえって建物を弱くしますから注意が必要です。これは、遮音や消音工事でも同じです。

宮崎 そうですね。耐震性の計算は建物の重さに対して行いますから、耐震補強で建物が重くなれば、その分強い耐震性の計算数値が求められることになります。

長谷 それに、耐震性を高めたいからと窓の真ん中に柱を一本入れる、などという工事では入居者の理解は得られません。補強の設計も工夫が必要です。

宮崎 耐震性を確保すると同時に、用途に応じた設計が必要ですね。事業所用の古いビルの場合では、見栄えはちょっと悪いけれど、しっかりした耐震補強をしたら満室になったという例もありました。そのへんをしっかり設計士と相談すべきです。

長谷 新築でもリフォームの場合でも、信頼できる業者の選択が大事です。信頼できるというのは、実績ももちろんですが、例えばお金のこと、予算のことも駆け引きなしに話せて、任せられる設計士や業者ということですね。

宮崎 既築の集合住宅の場合は、コストを考えるならば全面的なリフォーム、リニューアルのときに、同時に耐震を見直すという判断が良いでしょう。リフォームについてひとことだけ付け加えれば、リフォーム業者の選定には十分配慮していただきたい。いい加減な業者に依頼して大変なことになったという例が、数多く報告されていますので。